昭和から平成への代替わりでは89年2月の昭和天皇の大喪の礼、90年11月の天皇陛下の即位礼正殿の儀にあわせて2回の恩赦を実施した。今回は皇太子さまの即位に伴う即位礼正殿の儀にあわせたもので、憲政史上初の天皇陛下の退位にあわせた実施は見送る方向だ。
今回の恩赦の対象は平成の時よりも減るとみられる。法務省幹部は「刑法犯を含む犯罪の件数は減少傾向にあるため、恩赦の対象となる人数規模も少なく見込んでいる」と話す。
被害者や遺族の感情に配慮し、対象犯罪は軽微な罪に限定する見通しだ。犯罪被害者保護法や犯罪被害者基本法が成立し、政府は被害者の権利を重視する政策に取り組んできた。殺人や放火、強盗など明確な被害者がいる犯罪を対象に含めれば、これまでの政策の方向性と矛盾しかねないだけでなく、世論の反発を招く可能性がある。
昭和天皇の逝去に伴う89年の恩赦では道交法や軽犯罪法違反などを対象とし殺人、放火、強盗などは除外した。90年の天皇陛下の即位礼正殿の儀に伴う恩赦も道交法違反が多くを占めた。93年の恩赦では4分の3が公職選挙法の違反者だった。
皇位継承時でなく秋に実施するのは夏の参院選への影響を避ける狙いもあるとみられる。政府関係者は「選挙前に批判を受けるリスクはなるべく小さくしたい」と語る。
恩赦には政令で罪や刑の種類、基準日などを定めて一律実施する「政令恩赦」と、個人の申し出で中央更生保護審査会が審査する「個別恩赦」がある。個別恩赦のうち「特別基準恩赦」は政令恩赦の要件から漏れた人を対象に内閣が定め、一定期間に限って行う。新天皇の即位礼正殿の儀に伴う恩赦を政令で定めるか個別の基準によるかといった詳細は今後詰める。